《患者さんにも知ってもらいたいアトピー性皮膚炎の基礎知識》



1. アトピー性皮膚炎は世界中で見られる普通の皮膚病

アトピー性皮膚炎は決してめずらしい病気ではありません。2000年前にローマ皇帝アウグストゥスもこの皮膚炎にかかっていましたし、6世紀にはすでに「あわだつ、さわぐ、沸騰する」という意味のエクゼマ(日本語では湿疹)と言う言葉がすでに皮膚炎の意味で用いられていました。*2,3 100年前には英国、ドイツ、フランスでアトピー性皮膚炎についての詳しい記録が残っております。*4
現在では、アトピー性皮膚炎になりやすい体質を持っている人は、人工の20%ほどであろうといわれています。*5  1999年には英国のウイリアムス*6は世界37カ国(6歳から7歳の児童25万人および13歳から14歳の青少年45万人)でアトピー性皮膚炎患者さんの頻度をアンケートで調べ、児童ではイランの2%から日本やスウェーデンの16%まで、青少年ではアルバニアの1%からナイジェリアの17%まで国々によりアトピー性皮膚炎の頻度がさまざまであることを解明し、このことからもアトピー性皮膚炎の発病には生活環境にある悪化因子が大きくかかわっていると考えています。





2. アトピー性皮膚炎の成り立ち

アトピー性皮膚炎は皮膚炎をおこしやすい体質(遺伝素因)のある方に、外部から皮膚炎をひき起こす刺激(悪化因子)が作用することにより、目に見える形の皮膚炎(湿疹)として出てきます。*7,8 また、一旦湿疹ができると、この湿疹のためにさまざまな二次的な変化が生じ、これらの二次的変化が一層湿疹を悪化させる悪循環に陥ります。





3. アトピー性皮膚炎の自然経過

アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりしながら慢性の経過をたどり、年齢がすすむにつれて軽快・治癒しますが、実際の経過は人によってさまざまです。*9
例えば、乳幼児期のみで治癒する人もあれば、乳幼児期から成人期まで皮膚炎が続く人もいます。小学校低学年で一旦治癒あるいは軽快し、思春期に再燃あるいは悪化する人もいます。このアトピー性皮膚炎固有の自然経過の複雑さがアトピービジネス介入のすきを与える背景因子の一つと思われます。
また、思春期になると、これまで主に四肢屈側に分布していた皮膚炎が、上半身や頚部・顔面にも拡大することがしばしあります。さらに年齢がすすむと手湿疹だけ残して他の皮膚炎が治る人や、すべての皮膚炎が治る人も少なくありません。これらの事実は、アトピー性皮膚炎の悪化因子は、人により異な事、また同じ患者さんでも年齢により、また皮膚炎の部位により悪化因子が異なることを示しています。
重要なことは、他人と比べないことです。自分自身の悪化因子が何であるかをしっかり見極めることです。自分自身の悪化因子を見つけるための基礎資料にするために、皮膚科を受診する際には、自分自身の皮膚炎のこれまでの経過を整理しておくとよいでしょう。
自分だけなぜ治らないのだろうかと弱気になると、アトピービジネスの介入のすきを与える事になりかねませんので注意が必要です。アトピー性皮膚炎は本当になおるの?いつになったらなおるの?との患者さんやその家族の方々からの問いかけには、これまで本邦および諸外国で行われた本症の予後調査の成績にもとづいて回答出来ることが必要です。*10-13





4. アトピー性皮膚炎は増加している

上原らは1973年に京都市において集団検診により本症患者の有病率を調査しました。*14 そこでわれわれは全く同じ診断基準を用いて1993年から19994年にかけて大津市における本症の有病率を調べ、その結果を比べてみました。*15,16
乳児検診、3歳時検診、幼稚園、小学校、高校へと出かけて行き、春の健康診断の際に皮膚科医により合計約8300名の検診を行い、3カ月児かっら18歳までの各年齢層におけるアトピー性皮膚炎の有病率を調査しました。乳児期の有病率は約30%であり20年前とほとんど変化していないのに対し、10歳前後の有病率は15%であり20年前の2倍、18歳では11%であり20年前の約5倍に増加していることがわかりました。





5. アトピー性皮膚炎増加の理由

アトピー性皮膚炎の大多数は乳幼児期に発症しますので、この結果は20年前と比較して本症の発症率はさほど変化していないものの、加齢とともに治癒する傾向が弱まっていることを示しています。良くならない理由は悪化因子の増加、生活指導の誤り、不適切な治療などです。*17-19





6. アトピー性白内障

重症な状態が続くとアトピー性白内障を合併することがありますので、皮膚炎をできるだけ良好な状態にコントロールすることが必要です。*18,20,21




日常生活におけるアトピー性皮膚炎のさまざまな悪化因子の除去法

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