《ステロイド外用剤の弱点と将来の展望》



ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎のきわめて有力な治療薬でありますが、万能ではなくまた、種々の副作用もあります。

ステロイド外用剤を顔面に長期間用いるとステロイド酒渣を作ることは1970年頃から知られています。

また、本邦では思春期から成人期の顔面のアトピー性皮膚炎に対し弱いステロイドが漫然と長期間使用されることにより難治性の顔面紅斑を作り出したと思われます。一方、逆に顔面紅斑が活発な状態で従来用いていたステロイド剤を突然中止すると一層の皮膚炎の悪化を招き、アトピー性白内障を作り出す可能性があります。

幸い、タクロリムス軟膏という免疫抑制剤が外用薬として2000年には許可されて、一般診療に使用可能となっております。

現在、顔面の皮膚炎をステロイド剤でコントロールしている成人期アトピー性皮膚炎の患者さんは、決して突然ステロイドを勝手にやめることはしないよう、専門家の指導のもとにタクロリムス軟膏へと治療を切り変えていかれることをお勧めします。

本症に対する深い理解のある専門家の手によればアトピー性の白内障を来すことなく顔面の難治性紅斑を治していくことは可能な時代になって来ています。

アトピー性皮膚炎の病態や自然経過を理解していない素人の民間療法に頼って、アトピー性皮膚炎を悪化させる人が少しでも少なくなるよう願っています。本稿がその一助になれば幸いです。 1999,19-22




アトピー性皮膚炎と洗濯洗剤

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